結婚75周年のご夫婦と。”回想法”が私たち福祉施設職員にもたらすもの

こんにちは。第二長寿園 広報担当 浦です。
日々働いている私たちの取り組みと、いつも私たちを笑顔にしてくれる入居者様とを、ご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、ご夫婦で入居されている歳次さんとタミさんです。第二長寿園では、認知症の予防にも効果的な回想法を取り入れており、楽しく生活していますが、この回想法、なんと働いている私たちにも、とても有用な方法なのです。

さて、今回紹介させていただく歳次さん、タミさん。歳次さんは101歳、タミさんは96歳になる御長寿の夫婦で、今年で結婚75周年になります。

歳次さんは一昨年、タミさんは今年からご入居されております。タミさんはしばらくショートステイをご利用されていましたが、現在は約2年ぶりに同じお部屋で過ごしています。

お互いを「ばーば」「とうちゃん」と呼びあっているのですが、たまにタミさんが「歳ちゃん」と歳次さんのことを呼ぶんです。それも、とびっきりの笑顔で。

101歳の歳次さんをちゃん付けできるのは奧さまくらいですね。リラックスされているようで、とても嬉しくなります。昔のことを思い出しては、呼び方やコミュニケーションが変わるのです。お二人がまだまだお元気だった頃(80歳くらい?)、までお風呂は一緒に入っていたというお話を伺うこともできました。なんと仲睦まじい!

第二長寿園では、認知症のリハビリのために、回想法を取り入れています。回想法は、60年代にアメリカのロバート・バトラー医師によって提唱された心理療法です。

昔のことを何度も口にする高齢者に多い現象は、それまで、ネガティブな現象に捉えられてきましたが、実は、昔のことを思い出してコミュニケーションのコンテンツにすることは、自己形成や生きるモチベーションを引き出すためにとても効果的であるという研究をベースにした、臨床心理療法のひとつです。

歳次さんタミさんご夫婦とも、回想法の手法を取り入れて私たち職員はコミュニケーションを取っています。回想法は、昔のプライベートなお話が多くなるので、とてもセンシティブな方法でもありますが、共感できるポイントを増やし、信頼関係を作るのにも一役買っています。プライベートな内容を載せることはできませんが、新婚の頃やお子さん、お孫さん、そして、ひ孫さんができたことのお話などを聞かせていただきたいと思っております。

こんな素晴らしい入居者様に囲まれて働いている私たちは、回想法によって、信頼関係をお互いに築けることはもちろん、ここ奥能登の伝統的な生活や風習などの生きた知識を得ることができ、日常の良い刺激です。福祉サービスは、「サービスの受け手と送り手の関係性」だけでは決してなく、お互いに価値ある存在であることを意識できるエピソードでした。

いろんな写真をお部屋に飾らせていただいております。一番大きな写真はご夫婦でイチゴ狩りに出かけ、タミさんが歳次さんにイチゴを食べさせてあげているときのものです。
この写真を見て笑顔にならない職員はいません。